ベトナムが起こすアジアコーヒー業界の革新

赤道に近く一年中気温の高い東南アジアの一国ベトナムはその地理を生かし、他地域では収穫のできない作物を多く生産している。中でもコーヒー豆はその代表としてベトナム産業の中核を担っている。

ベトナムとコーヒーは古くから関係が深く、その始まりは19世紀にフランスより持ち込まれたアラビカ豆の木より始まったとされている。現在でもベトナムコーヒーという言葉を耳にすることは多く、ベトナムコーヒーカルチャーの影響力の大きさを表している。意外にも多くの人は知らないものの、ベトナムのコーヒー生産量はブラジルに次ぐ世界第2位となっており、名実ともにコーヒー国家と呼ぶのにふさわしい。しかし、一般的にベトナムときいてコーヒーを思い浮かべる人は少ない。というのも”ベトナムコーヒー”と聞いて最初に思いつくのはあの独特の香りと甘い練乳で作られたコーヒーであることが多く、日本国内で味わえる場所もかなり限られている。そもそもベトナムコーヒーはコーヒーの作り方はもとより、その豆自体も一般的に私たちがカフェなどで口にするアラビカ豆ではなく、強い苦味と独特な味わいが特徴のロブスタ豆が使用されている。コーヒー生産量が世界2位であるにもかかわらず、ベトナムにコーヒーのイメージがあまりないのは、彼らのコーヒー豆生産量の8割がこのロブスタ豆となっていることが大きな要因と考えられる。

一般的に市場に多く出回っているアラビカ豆は、フルーティな香りと、口当たりの良さから、多くの人に親しまれている。一方のロブスタ豆は強い苦味と、その独特な味わいから一度飲むと病みつきになるとして、一部のファンから大きな指示を集めている一方で、大衆向けの味わいではない。そのためベトナムで栽培される多くのロブスタ豆はあまり一般消費の場に現れることは少なく、缶コーヒーなどに使用されることが多い。

ロブスタ豆はベトナムコーヒー文化の中心にあるということに加え、アラビカ豆に比べ病気に強く、生産に手間がかからないという特徴を持っている。収穫時期以外は出稼ぎに出るベトナムの農業体系により適していることもベトナムでのロブスタ豆生産が多い一つの要因である。

しかし、近年ではベトナムのコーヒー業界に大きな変革が起きている。ベトナム=ロブスタ豆のイメージを覆すため、高品質アラビカ豆の収穫に力を入れる農家が見られるようになってきた。まだまだ発展段階ではあるもののそのコーヒーの味わい深さと香りの高さは既に世界トップクラスと言っても過言ではない。また、アラビカ豆への注力が盛んになる一方で、ベトナムコーヒーの代表であるロブスタ豆に今まで以上に力を入れる農家も増えており、ベトナムのコーヒー業界全体の加速度的成長を促している。

ベトナムのコーヒー生産の中心地であるダラット では現在多くのコーヒー農家がアラビカ豆生産を行っており、町の至る所で非常の質の高いコーヒーを味わうことができる。一度味わえばその香り高いコーヒー豆の虜となる人も多いであろう。コーヒー生産量世界第2位というコーヒー国家で起きているコーヒー豆の質に対するこのムーブメントは、アジアコーヒー業界の体系を大きく変える革新となっていることは間違いない。そして、ベトナムが世界のコーヒー国家としてその地位を築き上げる日もそう遠くない未来であろう。